グルメな夫妻に教わった、とっておきの「きゃらぶき」

春から初夏へと移ろうこの時期、八百屋さんや産直で見かける蕗(ふき)。
私の住む田舎では、あぜ道の蕗の群生を見つけるたび、「ああ、今年も春が来た~♪」と心が弾みます。
少し手間はかかりますが、この季節に一度は作っておきたいのが「きゃらぶき」です。
朝夕の気温差で少し疲れが出やすい今、ふきの爽やかな苦味は、冬の間に溜まったものを出し、体をシャキッと目覚めさせてくれます。


きれいに洗い、3㎝ほどに切り揃えた蕗。
そこからさらに「十回、二十回……」と、何度も何度も洗ってアクを抜きます。一晩水にさらして、ようやく準備は完了です。
一般的な下処理のように指先が黒くなることもなく、板摺や下茹でも必要ありません。
けれど、この実直なひと手間こそが、蕗の野性味あふれる「えぐみ」を、雑味のない蕗らしい「苦味」へと昇華させるのです。

水をきった蕗を、しっかりと蓋の閉まる無水鍋へ。
水は足さず、蕗が蓄えた水分だけで炊き上げていきます。
鍋がいっぱいになったら、少しずつ火が入って目減りするのを待ち、また新しい蕗を足す。
「減っては加え、減っては加え」
あんなに嵩(かさ)のあった蕗がしぼんでちゃんと鍋に収まってしまいます。
すべてが鍋に入ったら蓋をして極弱火で1時間程蒸し煮に。
じゅうぶんに蕗が汗をかき、その水分で煮えてきたところで、醤油と砂糖を加えます。
さらにそこから、なるべく蓋を開けずに…じっくり炊くと、蓋のすき間から蕗らしい清々しさとつくだ煮の甘辛い醤油のいい香りが立ち上り家中に広がります。
五〜六時間炊いて、水分がほぼなくなり艶やかな「伽羅(きゃら)色」に染まった蕗に思わず「にんまり」。
仕上げに入ります。蓋を外し火を強くして水分を飛ばし、この時アクセントの唐辛子を粉にして加えると、ピリッとごはんがすすむとっておきのおかずの完成です。日を置くごとに味がなじみます。
- 材料: 3㎏、砂糖(きび糖)5%・・・150g、濃口醬油5%・・・150㎖。仕上げに唐辛子5本(私の好みはもう少し増やしたピリ辛がおすすめ!)
- 整えポイント: フキ特有の成分は、消化を助け、気分をスッキリさせてくれる効果があります。お弁当の隅に少しあるだけで、安心するお守りのようなおかずです。


温かい白いごはんにも、お茶請けにも。
一度作っておけば、冷蔵庫にあるだけで「丁寧な暮らし」をしている自分が、自分を支えてくれる気がします。
そしてこの【きゃらぶき】は、グルメなご夫妻から伝授していただいた、とっておきのレシピです。
お料理を心から愛するお二人から教わったその味は、ふきの野性味ある香りを生かしつつも、どこか上品で奥深い。
一度この味を知ってしまうと、この季節にこの手仕事をしないと、春が終わらないような気がして。
大量のふきと向き合うのも私にとって心と体を季節のリズムに整える、大切な時間でもあります。グルメなご夫妻から教わったこの知恵を、これからも大切に、繋いでいきたいと思います。
皆さんの食卓にも、春の終わりの清々しい香りが届きますように。
